ゲーセンでは今も根強い人気を誇る格ゲー(格闘アクション)ですが、今回はその全盛期に出た変わり種の一つである「
私立ジャスティス学園 LEGION OF HEROES」について書いていきたいと思います。
私立ジャスティス学園
私立ジャスティス学園 LEGION OF HEROES
対応機種:アーケード
メーカー:カプコン
ジャンル:対戦格闘アクション(公称:熱血青春バラエティ)
稼働開始日:1997年12月
<プレイステーション移植版>
対応機種:プレイステーション(PS1)
発売日:1998年7月30日
<ゲームアーカイブス(PS版を収録)>
対応機種:
プレイステーションポータブル(PSP)
プレイステーション3(PS3)
プレイステーション・ヴィータ(PSV)
発売日:2012年2月22日
199X年、日本中の高校で生徒襲撃・誘拐事件が頻発。
警察の厳重警備すらすり抜けて繰り返される犯行。そしてついに、生徒たち自身が事件解決に立ち上がった!
「オレたちの学校は、俺たちが守る!」
しかしこの事件の背後には、ある学園を丸ごと操り、そして日本制圧を狙う陰謀があった…
ゲームセンターでの格ゲーブームも一段落したものの、まだまだ日本各地で熱い戦いが繰り広げられていた1990年代後半。
格ゲーブームの火付け役となったカプコンも、その座に甘んじることなく、様々な格ゲーを制作していました。本作もそんな作品の一つ。
グラフィックは3Dポリゴンですが、ゲームシステムは同社の「ストリートファイターII」を基本とし、2対2のタッグマッチ形式で、超必殺技にあたる「
完全燃焼アタック」や相手を空中に吹っ飛ばして追撃を行う「
エアバースト」、パートナーとの合体技「
愛と友情のツープラトン」など、「X-MEN VS. STREET FIGHTER」に代表される「VS.シリーズ」の要素を加味した感じのもので、軸移動などを除くとプレイ感覚は2D格ゲーそのものです。
また、パートナーとの交代はラウンド間のインターバルのみで可能(無理に交代しなくてもよい)、ボタン数は当時のカプコン格ゲーの標準より少ない4ボタン、様々な特殊操作が用意されているものの基本的にはボタン同時押しかレバー+1ボタンで発動可能、と格ゲーに慣れていないプレイヤーでもプレイしやすいように設計されています。
格ゲーとしては一人プレイも重視されており、同じ高校に所属している設定のキャラ同士でタッグを組むとストーリーモードが始まります。
ストーリーモードでは戦う相手がステージごとに固定化され、ステージ間の会話シーンでストーリが展開。所属高校別にストーリーが用意され、繰り返し遊べるようになっています。
また特定のステージでの戦闘結果次第では、中盤のストーリーをすっ飛ばしてラスボス一歩手前までワープしたり、ラスボスを特定の方法で倒すと真のラスボスが現れ、倒すとグッドエンドになるというストーリー分岐も取り入れられています。
タイトルやストーリー、システムの用語から感づいた人もいるかも知れませんが、ストーリーやキャラ造形は基本的に60~70年代の
熱血スポ根漫画をモチーフとしており、現在はおろかこのゲームが発売された1997年においてもかなり異質のものでしたが、お約束連発の剛速球ストレートど真ん中の性格付けがなされたキャラクターたちはとても魅力的。ビジュアル的にはやや暴投気味(特に
肩プロテクター装備で戦う国語教師・島津英雄とか)でしたが、むしろプレイヤーからはツッコまれつつも好意的に受け取られました。
グラフィック的には対戦画面の3Dポリゴンはやや難のあるものでしたが、3Dであることを存分に生かした愛と友情のツープラトンなどのド派手な演出や、美麗な2Dグラフィックは評価の高いものでした。
一方で対戦ツールとしては粗が多いものでした。
システムが単純なわりにゲームバランスがいい加減で、キャラクター間の格差が大きく、またローキック(立ち弱キック)が異様に当てやすくコンボに持っていきやすいため、「
いかに相手の攻撃をかわしつつローキックを当てるか」という、豪快な見た目に反した地味~な戦いになりがちで、ゲーセンでは大して流行らずに消えていくことになりました。
ところが、本作はPSに移植されたことでまた違った面で評価されることになります。
PS移植版は2枚組になっており、アーケード版完全移植+ストーリーモードのフルボイス化を行った
アーケードディスクと、前述のローキックを始めとするゲームバランスの改善を行い、新モード「熱血青春日記」を追加した
エヴォリューションディスクがセットになっています。
完全燃焼アタックがボタン1つで出せるようになったなど、改善点も多かったのですが、特に高評価を受けたのが、エヴォリューションディスクの「
熱血青春日記」。
「熱血青春日記」は自分だけのオリジナルキャラを作れるモードで、作成したキャラをメモリーカードにセーブして持ち寄り対戦することも可能です。
ただし、普通のエディットモードと違うのは、ストーリーに登場する高校に通う学生として1年を過ごしながら自己鍛錬に励むという
育成SLG風のゲームになっているところで、他に実技試験と言う形で実戦形式で操作方法や基本戦法を学べるチュートリアルの要素や、登場キャラと交流を深める
恋愛SLGの要素まで取り入れています。
育成によっては既存キャラより圧倒的に強いキャラだけでなく、空中戦を得意とするなどとんがった性能のキャラや、
対戦相手を片手で振り回す怪力少女などビジュアル的にアレなキャラを作ることも可能であり、また
主人公と同性のキャラでも攻略可能という自由度の高さで好評を得ました。
そのため、約一年後に、「熱血青春日記」モードに特化した続編「
私立ジャスティス学園 熱血青春日記2」がPS限定で発売されることになりました。
私立ジャスティス学園熱血青春日記2
またPS移植版では新キャラが二人追加。そのうちの一人である、漫画家・島本和彦氏デザインの「
熱血隼人」は、赤ジャージに身を包み竹刀を持ったびっくりするくらいコテコテの熱血体育教師であり、
対戦相手に腕立て伏せを強要したり、パートナーを竹刀で連打して気合を溜めさせるなど絶大すぎるインパクトを持つキャラでした。(またこの竹刀が良い音を出すんだ…)
結果的に格ゲーとしてではなく、キャラゲー・格ゲーも遊べる育成&恋愛SLGとして評価された本作。
格ゲーとしても完成度は高くないながらも決して遊べない出来ではなく、あまり細かいことを気にせず適当にワイワイ遊ぶ分にはむしろ非常に楽しいゲームです。
それじゃ、今日はこのへんで。
私立ジャスティス学園熱血青春日記2 公式ガイドブック